世界各国で新型コロナウィルスワクチン投与が急がれています。新型コロナウィルスによるパンデミック収束の第一歩として期待がされていますが、同時に、実際に投与が開始されれば、企業として従業員にワクチン接種を強制できるか等、難しい課題も生じます。本ニュースレターで は、主要数ヵ国を対象とし、ワクチンの入手可能状況、雇用者によるワクチン接種強制及び接種拒否者に対する措置の可否など、雇用者にとって必須の最新ワクチン関連情報を取り纏めております。
アメリカ合衆国:
新型コロナウィルスワクチンは現在、既に実用化されています。ただし、現時点では雇用者がワクチンを直接入手することできず、また、ワクチンの配布については各州により運営が異なます。そのため、従業員にワクチンの接種又はその証明書の提示を求める場合や、ワクチン接種拒否者に対し何らかの措置をとる際には、連邦、州及び地方自治体の規定に従って対処する必要があります。ワクチンの接種を促すにあたり、従業員に対する差別的行為とみなされないよう注意も必要です。
香港:
現時点でワクチンの実用化はなされていないものの、優先順位に沿った投与が近日開始されることが予想されています。雇用者によるワクチン接種や証明書提示の強制、及び接種拒否者に対する措置などについては、ケース・バイ・ケースの判断がなされるものと思われます。
日本:
ワクチンの臨床実験が続いており、未だ実用化はされておりません。このため、ワクチン接種に関する雇用者の権利についても、現状未確定です。ただし、近日(本年2月末頃)のワクチンの承認が期待され、3月~4月には、医療従事者や高齢者など特定の対象者を優先した投与が開始されるものと思われます。
イギリス:
開発者の異なる7種類のワクチンが、特に感染リスクが高いとみなされる対象者用に実用化されているものの、その他一般大衆に対するワクチンの商業化はされておりません。このため、雇用者がワクチンを直接入手することはできず、従業員に接種を強制することも現状許可されていません。また、欧州連合のデータ・プライバシー規定などの観点から、従業員に対しワクチン接種の証明書提示を要求することは実務上難しくなるものと思われます。接種拒否者に対し何らかの措置をとることは理論上可能であるものの、反差別規定などとの関係を考慮し慎重に対応する必要が生じます。
フランス:
2020年末にワクチン投与が開始されており、ワクチンの供給は政府によりコントロールされています。現状、雇用者が従業員にワクチンの接種又は証明書の提示を求めることや、接種拒否者に対し措置をとることは許可されていません。
ドイツ:
ワクチンはすでに実用化されており、現時点で100万人以上に投与がなされています。雇用者がワクチンを直接入手することはできず、従業員のワクチン接種はあくまで自主的なものにとどまります。また、原則として、雇用者がワクチン接種証明書の提示を求めることや、接種拒否者に対する措置をとることはできません。
ブラジル:
いくつかの異なるワクチンが承認されており、今後段階を経た投与の開始が予定されています。雇用者がワクチンを直接入手することはできないものの、従業員に対するワクチン接種の強制及び証明書の提示、ならびに接種拒否者への措置は可能とされています。ただし、従業員によるワクチン接種拒否に合理的な正当性(reasonable justification)がある場合など、接種の強制や接種拒否者への措置が認められない場合もあることに注意が必要です。
本レターは、当事務所フォーリン・アソシエイトである勝見将也弁護士及び岡田奈穂弁護士の協力を得て作成されました
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